非日常の始まり

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キーンコーンカーンコーン 「起立!礼!」 真面目な学級委員長が号令をかける。 「「「あっしたー」」」 3年2組クラス40人のうちのほとんどの運動部に所属していた男子の声が響く。 「さ。帰ろう…」 といった一人の高校生――肱川 智(ひじかわ さとし)は一回あくびをして、変える準備をした。 ――10月10日 しばらく続いた残暑も終わり、涼しい季節となった、この日。 智は、野球部に所属していた。 7月に行われた、夏の最後の大会。 結果は22年ぶりベスト8 輝かしい記録に見えるが、智はベンチメンバーだった。 あまい言いたくないが、出たのは最終回の代打の時だけ。 初球ほど甘い球が来ないし、しかもストライクを取りに来るピッチャーだったので、智はその初球を狙った。 見事予想は当たった。 得意の外角やや真ん中寄りに来たストレートを智のバットは芯に当った。 智の弾いた打球は、ピッチャーを通り抜け、センター前に転がろうとしていた。 しかし、 そのチームのキャプテンであり、プロ注目のショートにいい辺りの打球を捕られ、アウト。 智の最後の舞台はここで終わった。 ファースト塁審に「アウト」と言われた後の「あぁ~」という声が球場中をこだましたのをよく覚えている。
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