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この街の海田は、人を飲む。それがこの街を襲う災いというやつだ。海田に食料を取りに行った人が戻らずに、次の日、水死体となって発見される。
一回だけなら事故で済むけど、放っておくとそれが毎日続くようになる。だから一和島(ひとわしま)の街では、二人目の犠牲者が出た次の日に、御影人を人柱に立てることになっている。
「なあ、日辻。お前、最近何か、感じねえか」
「え……?」
大神さんがじろりと僕に流し目を寄越す。
「感じるって、何を?」
「……まあ、何だろうな。妙に街のマウラがざわつくっつうか。あー……」
「……?」
自分から話題を切り出しておいて、妙に歯切れが悪い。いつもなら僕のどんな質問にも立て板に水の如くさばさばと、思い切りの良い切り返しをするのに。珍しくあからさまに目を泳がせた大神さんが、少し考え込むような素振りを見せる。
「錆が……」
「え?」
「街じゅうの錆が、増えてる気がするんだよ」
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