贖罪と回帰の巫女-3-

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  大神さんが携帯電話を耳から離しながら、さすがに疲れたのか大きく息を吐いた。通報を入れたのは警察でも病院でもなく、概生研だった。あそこには大神神社としてのコネも多少あるから、御影人の力に関して面倒な説明も要らないのだと言う。 それに、そもそもあそこの職員が引き起こした事件なのだ。 「そうだ。概生研と言えば……」 「あ?」 「結局、海田(うなだ)のマウラと今回の事件って、どういう関係があったの」 いつの間にか随分と日も傾いていた。振り仰いだ西の空はくたびれた黄昏色にそまりつつあるけど、家屋の屋根越しに差し込む陽光はキンと冴えわたるような鋭さで芝生に影を落としている。 目の前には雨佐木さんとその母親が、安らかな顔で寝息を立てている。たぶん母親の方はもう、起きることはないだろう。  
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