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身体を包むものは錆の浮いた黒鉄(くろかね)の鎖から、柔らかい毛布へと変わっていた。大神さんが家の押入れを物色して持ち出して来たものだ。二人の手前にどっかりと腰をおろして、僕たちは概生研の調査員を待っている。
行儀悪くあぐらをかいた大神さんが、どこか憮然(ぶぜん)とした顔つきで頬杖をついた。ブレザーの胸元と肌の隙間が垣間見えてしまって、さすがにちょっと視線を逸らす。僕も大神さんもシャツを派手に汚してしまったから、下着の上に直接上着を着ているのだ。
「この街の金属が錆びやすいのを、知ってるか」
「え……?」
唐突な話題転換に少し、たじろぐ。そりゃあ知ってるも何も、常識なのではないかと思う。
「海が近いんだから。潮風で錆びるんじゃないの?」
今、僕らがいる南区の再開発地区だと目立たないけど、これが北区に近付くにつれて、街の景観は錆びて行く。
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