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「ふうん……」
つまり、この家のあらゆる金属が錆びついていたのも、海田に宿るマウラの影響を強く受けたためというわけだ。『鎌喰』なるマウラはどうやら僕の目には知覚できないみたいだけど、そう言えば御影の祠に祭られている水鏡も、街に災いが近づくにつれて錆びて行く。海田と錆びには確かに、深い因果関係があるように見える。
「お前も何となく、わかってるだろうけどよ。マウラってのは下手な使い方をすると、想像もしない形で自分自身へ災いを招いちまうものなんだよ」
「それは、うん。そうだね……」
よくわかっている。例えば、毎日のように生き物を殺さなければならなくなったりとか。自身の身体に宿しておける御霊虫の量が激減してしまったりとか。次の人柱の儀を大幅に早めてしまったりとか。今の僕という人間がそもそも、御霊虫というマウラを利用するのに支払った代償でできているような存在に、成り果てているのだから。
「あの家主は何か海田にちょっかいを出したせいで、海田のマウラに当てられたんだろよ。だからこの家も、有り得ねえくらい錆びてるんだ。そんで、海田のマウラに当てられた奴は大概、精神に異常をきたす。この街を襲う災いってやつも、同じだ」
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