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「つまり、ジュースをもって歩いていたら『うっかり』転びそうになって、ジュースを手放してしまい、それが『運悪く』私の頭上に降ってきた、と。」
「「はい」」
「そんなふざけた理由があるかー!」
さっきから似たようなやり取りを三四回繰り返している。
あの後、ジュースを投げた姿勢で固まっていた燈路はもちろん、逃げたからなんか怪しいということでユウキまで連行されて、お説教を受けてる最中である。
上級生二人と一年女子二人は、
「次やったら停学だからな」
の一言で解放されていた。
運良くというか、悪くというか、とにかく燈路の作戦(?)は彼女達を助けるという意味では成功したのである。
「だから、先生にジュースをわざと投げたりする訳ないじゃないすか」
燈路はバカなので、弁解は主にユウキの役目だ。
心底疑っているっという顔でシーちゃんはユウキと燈路を見たが、一回ため息をつくと
「そういう事にしといてやろう」
と諦めたように言った。
燈路はホッとしたように顔を上げて言った。
「先生、俺んちクリーニング屋なんでそのスーツうちで洗濯しますよ。」
「マジか!」
これで、シーちゃんの機嫌は70%直った。
「じゃあ、頼むわ。ちょっと待ってろ着替えてくる。」
オレンジの髪を揺らしながらドアの向こうに消えていく。
と、
「ひーろー!てめえなあ!」
ユウキが燈路にヘッドロックをかける。
「いっでででで!悪かったって!いだ!でも、お前逃げないで他人のふりしてれば良かったんじゃ」
「それを言うな」
ユウキが更に力を加える。
「ギャー!」
こうして、成嶺学院高校の楽しい一年(笑)が幕を開けた。
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