第18話 【背徳の愛 ~ 正臣Side 3 ~】

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俺の問いに対して、彼女は拍子抜けした様子で答えた。「何より金に満たされている」と。 金?知識?名誉?異性からの人気?―――そんなもの、俺にとって何の慰みにもならない。 人間が値段を付けた、カネで手に入れられるようなモノに興味は無い。 「カネ……か。そんなもの、満たされたって人間が満たされるものじゃない」 「……私達は生きる世界が違うのよ。だから、求めるものも違う」 俺の言い方が気に食わなかったのか、少し間を置いた彼女は冷ややかな声色でそう言い捨てる。 生きる世界が違う? 何をそんな大袈裟な言い方をする。 毎回そうだ…… 金の話になると俺を拒絶する。突き離す。 ブランド物が欲しい?金が全てだ? 嘘をつくな。 物欲だけで生きてる人間が、そんな怯えた目をしているはずが無い。 「何が欲しい?そうやって目を逸らさずにいるためには、何を手に入れたら満たされる?」 きっとそこに答えがある。 暗黒の地に身を沈めていた俺が、こんなにも彼女に惹かれた理由がきっとそこにあるはずだ。 追い詰められた様に壁に背を寄せ、口を引き結んで俺を睨み付ける彼女。 怒りと恐怖と俺が与える屈辱感と――彼女の瞳に生気を帯びた灼熱の色が混じり込む。 目を逸らすな。 言え。 答えを俺に…… 君の背負う闇を曝け出してくれ――― 「……自由よ。私が欲しいモノは、自ら作り上げた呪縛から解放される、自由。そのためにお金が必要なのよ…」 彼女は口を歪めながら、喉の奥から絞り出すようにそう言った。
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