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欲しいモノが自由?
【自ら作り上げた呪縛】から解放される…自由……。
彼女が口にした言葉を繰り返したその瞬間、精密機械に囲まれベッドに横たわる雪菜の姿が瞼に浮かんだ。
ドクンッと、衝撃を受けた心臓が大きな波を打つ。
まるで俺自身が覗き込まれているような気持ちになって、焦燥感が迫り来る。
「…どういう意味だ?」
不快な血流の流れを感じながら、俺は彼女を見つめ眉を歪める。
「要するに、私にはお金が全てって事です!」
「金があれば、自由にも幸せにもなれると?」
「そうです。いけませんか?欲しいだけのお金が手に入るまで、恋愛も、人間関係も私にとっては煩わしいものでしかない!」
彼女は何の躊躇いも無く言い切って、口元に皮肉めいた笑みを貼り付けた。
金があれば幸せ?
本気で言っているのか?
何なんだ...
その、勝ち気で淀みの無い表情は。
これは想像以上に……
「金が全て…それも一つの価値観。悪くない。だけど…おまえ、女として終わってるな」
……手強くて、面白い女だ。
「何なのあんた!失礼極まりないっ。普段は優等生ぶっちゃって、中身は最低!」
俺の挑発に乗った彼女は、目をつり上げて罵声を飛ばし始めた。
恋愛が煩わしいものだと、金が全てだという割に、俺の言葉一つで目くじら立てて怒り狂うか。
――要するに、女として捻くれた思考をしていても、内心では「女」を捨てたくない訳だ。
「その甘いマスクと言葉で、何人の女をたぶらかしてんの?」
何の話だ?
俺はおまえにしか興味は無い。
「からかって遊びたいなら他でやってって言ったじゃない!人の人生にズカズカと土足で踏み入れないでよ!」
からかって遊ぶ?
悪いが、俺はそんなくだらん遊びをしてるほど暇じゃない。
だから、何度も言ってるだろっ
「俺は、興味があるから近づきたくて…」
「だからっ!それが迷惑なの!…そんなに知りたいなら教えてあげる。それで気が済むんでしょ?」
言い終えずにまだ宙を浮かんでいる俺の言葉を叩き落し、彼女は薄ら笑いを浮かべる。
「……」
眉間に深いしわを刻み、彼女の言葉を待つ俺。
二人の間に、氷が張ったような静けさが漂う。
緊迫した二人の呼吸が重なり合ったと感じた瞬間、彼女は信じ難い過去を打ち明け始めた。
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