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誕生日プレゼントにアクセサリーの一つでも贈りたいところだが、そう言うわけにも行かない。
プレゼントがコンビニ商品とは味気ない事この上無いが、それも致し方なし。
ここにある商品でプレゼントとして渡せるとしたら……
杏奈に頼まれた商品を適当にかごに放り込みながら、彼女に贈るささやかなプレゼントを品定めする。
誕生日なら、やっぱこれか?
デザートが並ぶ棚の前に立ち、フルーツの乗った2個入りのケーキに視線を落とした。
手を伸ばすと、指先からひんやりとした冷気が流れ込んでくる。
……いや、待てよ。
あくまでも偶然を装うのに、そこでケーキは不自然すぎないか?
用意周到なのは気味が悪いし、俺が普段ケーキをコンビニで買っていると思われるのは、更に腑に落ちない。
俺が買って不自然が無く、思い立ったようにごく自然に彼女に渡せるものとなれば……
俺はケーキに伸ばしていた手を引っ込め、一番突き当りの棚に向かって足を速めた。
俺のお気に入りのビールを数本手に取って、かごに入れるとその足でレジに向かう。
レジの前に辿り着いたものの、未だ店員の姿は無い。
彼女の様子を確かめようとした扉に視線を向けた瞬間、
「お待たせして申し訳ありません!」
俺の姿に気づいた彼女が、慌ててレジの前に走りこんで来た。
ついに俺は、接近を試みてしまった。
心臓が高鳴って騒がしい。
「お待たせ致しました。いらっしゃいませ」
彼女は深々と頭を下げる。
顔を上げろ!俺に気づけ!
俺がそう念じた直後、頭を上げて笑顔を放った彼女と視線が重なった。
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