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?「君は彼を信用していないのか?
僕が言うのも気が引けるが彼は裏では名の知れた商人だ、契約を結べばたとえ国一つを相手にしても裏切らない絶対契約主義者…そんな名が通っているくらいに彼は義理堅いんだ。」
麻「だとしてもよ…どんなに取り繕ったって人間は何れ変わる、今は絶対契約主義者でも明日には金至上主義者に変わっているかもしれない…。
不安は拭っても拭っても拭いきれない…だから私は完全に信用するなんて事は出来ないのよ。」
私とハザの関係は契約関係だけではなく共犯、もしくは被害者と加害者とも言える複雑な物だ。
指輪で生殺与奪を握り、傭兵達への食糧供給の為の闇商人の斡旋、なんとも歪な関係になってしまったと私自身思う。
?「…それで?ハザを使ってまで僕を呼び出した意味をそろそろ聞かせて貰えるかな?」
麻「せっかちね…さっきも言ったでしょう?
私は貴方に興味が湧いたから此処に居るのよ、ハザは貴方の事を必ず気に入ると言って居たからどんな人間なのかと期待していたのだけれど…。
期待外れだったみたいね。」
期待していた物と違うと分かった今、これ以上此処に留まる意味はない。
早々に立ち去ろうと席を立った途端、鋭い殺気を感じ身を捩ると数瞬前まで頭部があった地点を何かが通過する。
?「呼び出しておいて随分な口を利くじゃないか…。
気が変わった、ハザの仲介だから我慢していたが君がどんな味なのか知りたくなったよ。」
麻「…成る程、これは私好みだわ。」
・・・・・・・
席に着いたまま耳元で聞こえるこの声に湿り気を含んだ生暖かな息…ハザが気に入ると言って居た理由はこれか。
?「これを見て好みだなんて変わってるね、君。」
麻「よく言われるわ。」
ハザが気に入ると言った理由、それは目の前で鎌首をもたげるこの異形が理由だろう。
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