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人のそれと全く別物とも言えるその異形はカチカチと白い歯を鳴らし、まるで獲物を狙う蛇のようにウネウネと動き回る。
?「僕は産まれも分からない元孤児でね、気付けば死骸の山の中でこの様さ。
自分が人間なのかさえ危ういよ。」
麻「私は素敵だと思うわよ?
・・・
その舌。」
ぬらぬらと光る表面、そして優に5mを超えて伸び続け、そして極め付きには表面の至る所に有る口だ。
剥き出しの歯で今にも食らいつこうと執拗に追尾してくる舌を麻子はすべて紙一重で避け続けて居た。
?「これを褒めたのは君が初めてだよ、どこかおかしいんじゃないか?」
麻「心外ね、美的感覚なんて人それぞれでしょう?」
…しかしこの舌に限界は無いのだろうか?
紙一重で躱して居るとは言え、既にホールの大半が舌で埋まってしまって居る。
?「君は独特な美的感覚の持ち主みたいだね…。」
麻「まぁ、私自身あなたの事を言えた義理では無いしね。
…一つ質問なのだけど、この舌は切り落としても元に戻るのかしら?」
これだけの伸縮性だ、他に特異な事が出来ても不思議はない。
?「ん~…戻りはするが僕自身は凄く痛い…っ!?」
麻「そう、なら良かったわ。
戻らなかったらどうしようかと思っていたの、戻るのなら何をしても大丈夫よね?」
一瞬、ほんの一瞬麻子の手がブレたかと思うと執拗に追尾していた舌が半ばから切断され[屍食]は声にならない悲鳴を上げる。
?「―――――っ!!!」
麻「どう?一瞬だけど味わえたかしら?」
切り落とした舌を無造作に投げ捨てた麻子は椅子から床へと落ち、床を転がり回る[屍食]の背を踏みつけ強制的に動きを止めさせる。
案外踏んでみると気持ちいいわね、これ。
?「油断…したな?」
ドッ!
ピタリと呻き声が止まり、変わりに胸部を鋭い痛みが襲う。
麻「騙し討ち…勝ちに貪欲なのね…」
?「どちらかと言えば食べる事に貪欲なだけだ。」
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