穏蟲

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今思えば兆候は幾らでもあったのだ、雪がチラついて居たとは言え平原に生き物の姿が全く無かった事や防壁でのみ起こる失踪事件、そしてざわつくような粘着質の不快感…。 表面上では平和な街並みも水面下では既に崩れ始めて居たのだ、ゆっくりと少しずつ氷が溶けていくように… ノ「何なんですか…これは…!?」 レ「思った以上に状況は逼迫してるみたいだな…」 ガブラスからの緊急連絡を受け、私達は防壁の上にある詰め所へと来ていた。 ガ「此処だけではない、巡回用の通路にも点々と残っていた。」 屈み込み、地面にこびり付いた血溜まりを撫でるガブラスの話しが本当なら一刻も早くこの街から退避しなければ命の保障はない。 メ「今までの現象と少し違う…街全体じゃ無くて限られた範囲…。 何か理由が有る…?」 ガ「だが何にしろこれはマズい、今は防壁だけに留まっているが何時広がらんとも限らん。」 レ「だな、冷子に連絡を入れてすぐにでも街から住民を避難させないと…。」 ズズッ… ノ「っ…!?」 メ「ノウン…?どうしたの…?」 ゾクリとした鋭い感覚が首筋に突き刺さり思わず振り返るが其処には点々と続く血溜まりだけがあり、生き物の気配はまるで感じない。 ノ「いえ、今なにか…気のせい…みたいです。」 レ「おいおい、お前の探知能力は洒落にならないんだビビらせるなよ。」 ガ「メリア、冷子への連絡を頼む。 今なら街の責任者に会っている筈だ。」 メリアはコクリと小さく首を縦に振ると少し離れた所で通信を開始するが数秒も経たない内に慌てた様子で此方へと戻って来る。 レ「どうだった?」 メ「ダメ…何故か通信が繋がらない…皆にもこの距離で送ってもダメ…」
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