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全く理解が追い付いて来ない、この現状にも目の前で先程の事が嘘のように平然と話す二人にも。
?「予定外の来客?」
?「はい、マスターより預かって居た名簿に名のあった要注意人物達が既に街へ入り込んでいます。
少々早いですが任務を切り上げ帰還しましょう。」
その時、チラリと女性が此方を見ると更に深い溜め息を吐く。
?「ハァ…まぁ、一応やらなきゃいけない事は終わらせてあるから帰還する事に異存はないわ。
それよりアレ、どうするのよ?」
?「少々お待ちを、マスターに指示を仰がなければ。
僕個人での判断は致しかねます。」
アレ呼ばわりされるのは少し腹立たしいが状況が何一つ飲み込めていない私には今現在下手な行動は起こせない、此処が何処でこの二人が何者なのか分からない内は大人しくしている他無い。
?「…了解しました。」
?「で?どうしろって?」
?「彼女を餌に要注意人物達を街の外へ誘き出し、計画を実行に移すようにと。
ですのでもう隠密行動をする必要は無いようです、好きに暴れて結構ですよ。」
?「あっそ、じゃあ好き勝手にさせて貰うわ。」
その瞬間、女性の下半身が不気味に蠢き始め、何か別の形へと変化していく。
?「ハァァ…やっぱりこっちの方がしっくり来るわぁ…。」
恍惚の表情を浮かべ顔を緩ませる女性の下半身は巨大な蜘蛛へと変わり、キチキチと虫特有の音を響かせる。
ノ「化け物…!」
?「あら心外ねぇ、あなただって似たような物でしょう?」
一瞬、心臓が跳ねた気がした。
そうだ、私と彼女、そこにどんな違いがある?
何も違わない、彼女も私も…
人であって人じゃない、虫と共生する人に似た何かなのだ。
そんな彼女を私は化け物と呼んだ、それはつまり私自身を化け物と言ってしまったと同義だ。
そして私自身を客観的に見た結果でもある、そこで私は考えてしまった彼女…冷子も私を化け物だと心の中で思って居るのでは無いかと…。
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