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「そうなんだ」
クイズは小さく頷く。
「でも世界征服なんか、何がいいんだろ」
「理解できずとも構わない。見かけは近くとも、所詮魔族と人間は全く別の生物。相いれない存在なのだ」
「ケイオス見てると、そうは思えないけど。――ま、いいや」
一足先に食べ終えたクイズが席を立つ。
「さーて、明日は西の洞窟の魔物を倒しに行くから今日は早く寝ないと!」
西の洞窟だと? 待て、何の話だ。
「グリムは西の洞窟に棲息する魔物。それが町までおりてきたってことは、西の洞窟で何かあったってこと。当然、勇者としては原因を突き止めるでしょ」
当然のこととでも言いたげな顔でクイズは言い返す。
「まだ私は勇者をやるとは――」
「だからって、今更魔王には戻れないじゃない。また魔物やら魔族やら一から統一するの、大変だよ」
「それなら魔王でなくとも――」
「じゃ何? 僕より二百歳も年上なのに無職? ニート? すっぴん?」
「私はもう別にどうでもよいが」
あまりにしつこいので、適当にあしらった。瞬間、クイズの表情が一段と険しくなる。
「どうでもいいって、どういうこと?」
「事実を言った、それだけだ」
「……風の精霊シルフィードよ、我が意に応え大気の障壁を築け」
ぼそぼそと言っていたので、呪詛の言葉かと思った。後半で詠唱と気付いたが。
「バリアー!」
対応を取る前に四方を壁で囲まれた。
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