第1章

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封印の井戸  久しぶりの光が、まぶたの裏から目を焼く。天から降り注ぐ日差し、周囲を取り巻く漆黒の闇。床にうっすらたまった水に、漆黒のマントを着た男が映っていた。  長身痩躯、流麗な銀髪、切れ長の目は右が蒼で左が紅のオッドアイ。寝ぼけた頭が「誰だ」という疑問をはじき出すが、すぐにそれが自分の姿であることに気づく。  そうだ。私は確か勇者ブレイドに敗れ、傷を癒すため、そして新たな強敵と出会うために眠りについたのだった。いったいどれほど眠っていたのだろう。大賢者ワイズの予言が当たっているならば、今は百年ほどの未来、私の眠りを覚ましたのは――。  ストッ!  何者かが地面に着地する音。私は腰の魔剣に手を添える。予言が当たっているのならば、私の眠りを覚ましたのは勇者の末裔。新たな魔王を倒してここに行き着いた者のはずだ。そして私は、そやつを迎え撃つ存在! 「フハハハハハハ! 待ちくたびれ――」  と、そこまで言って私は固まった。  私の目の前にいたのは、白いローブをまとった小柄な少女だった。  体に見合わない大ぶりの杖や、左右の髪を布でぐるぐると縛った特殊な髪形。魔導士・賢者系統のジョブについているのだろう。手に封印の鍵を持っていることから、封印を解いたのが此奴であることは間違いない。  しかし、魔導士や賢者は強力な魔法攻撃を繰り出すことができる一方、その威力に比例した詠唱時間がかかってしまう。時間稼ぎをしてくれる剣士や格闘家とパーティを組まなくては魔王どころか、強めな野生の魔物すら倒すことは難しいだろう。 「なんだ貴様は」 「いきなりテンション下がった!?」  そんなことを言われても、百年の眠りから覚めて、封印を解いた人物が自分の希望していた相手ではなさそうとわかったら、テンションも下がる。 「まあ、いいけど。僕はクイズ。まだ見習いだけど、一応賢者さ」  少女は腰に手を当て、それほど大きくない胸を張った。
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