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始まりの町 カントル 商店街
「うわー、ひっどいなー」
大嵐が過ぎた後のような商店街を眺め、クイズがつぶやいた。
「そうか? まだ手ぬるいと思うが」
私だったらこれに加え火を放っていただろう。
「いったい誰がこんなことを……」
「グルルルルルル……」
果物の入った箱の影から獣の唸り声が響く。
「どうやらお出ましらしいな」
箱の影から出てきたのは、漆黒の大型犬のような魔物。外側に飛び出した肋骨。赤く光る目。
「おい、そこの――」
あれ、クーシーでもないし、ケルベロスでもないし――こんな魔物いたか?
「なんだ貴様は」
「ええええええええっ!?」
む、クイズ。いちいち叫ぶな。うるさいぞ。
「グリム知らないの?」
「グリムというのか。知らんぞ、こんな魔物は。新種か?」
「新種って言っても、発生したのは僕が生まれる前だと思うよ? ケイオスの時代って、どれぐらい魔物いたの?」
「百五十一種」
「それだけ!? 今は六百四十六種類いるんだけど」
「そんなにたくさん、覚えきれんぞ」
「ガルルルルッ!」
突然、グリムが私の腕に噛みついた。
「くっ! 貴様、やる気か!」
フハハハハハ、いいだろう! この私相手にいい度胸だ!
腕からグリムを引き離し、私は鞘から魔剣を引き抜く。
「あれ?」
魔剣は途中で折れていた。
「な、何故っ!?」
ああ、そういえばあれは百年前――。
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