第1章

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回想 百年前の魔王城  私は勇者に追い詰められた。後一撃を食らえば、確実に戦闘不能に陥る。 「フフフ、さすが勇者ブレイドといったところか。しかし、私はここで負けるわけにはいかん!」 「ケイオス……俺は、必ず、貴様を、倒す!」  勇者は私を睨みつけた。既に戦えない状態の仲間どもが、勇者に応援のまなざしを送っている。 「よかろう、来るがいい、勇者よ」  どうせ、あちらにも大した体力は残っていまい。この攻撃を受け止めれば、私の勝ちだ。私は魔剣を構え、守備の体制をとる。 「これで最後だ! うおおおおおおおおおっ!」  ガキィ……ン!  鋭い痛みとともに私の肩から血飛沫があがる。魔剣は、根元から三分の一ほどのところで折られていた。 「そんな……そんな莫迦な……!」  ザクッ。魔剣の先が地面に突き立つ音を背後に聞いた。 回想終わり カントル 商店街  うっかり忘れていた。 「クイズ! 何か武器をこっちに!」 「わかった! ――ちょっと借りるよっ!」  クイズは店員が逃げ出した武器屋の店先から、手近な武器を拾って私のほうに放る。 「よしっ、礼を言うぞ!」  私は武器を受け取る。フン、なるほどこれは……。 ひのきのぼう? 「って貴様ああああ! もっとマシな武器をよこさんかっ!」 「贅沢言わないでよ! そんなことより、次の攻撃が来るよ!」  仕方がない、これで戦うしかないか。私はグリムの攻撃をかわし、頭部めがけてひのきの棒を振り下ろす。しかし、棒の先にグリムはいない。かわされたか!  再び相手を狙うも、存外身軽なフットワークに翻弄されてしまう。  百年の眠りにより私自身の体がなまっているのもあるだろう。しかし、魔物の知能も上がっているのか、我々の時代の直線的な戦いとは違う、左右への動きを加えた戦い方。  何より、握りの付いていないひのきのぼうでは戦い辛すぎるぞ!
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