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回想 百年前の魔王城
私は勇者に追い詰められた。後一撃を食らえば、確実に戦闘不能に陥る。
「フフフ、さすが勇者ブレイドといったところか。しかし、私はここで負けるわけにはいかん!」
「ケイオス……俺は、必ず、貴様を、倒す!」
勇者は私を睨みつけた。既に戦えない状態の仲間どもが、勇者に応援のまなざしを送っている。
「よかろう、来るがいい、勇者よ」
どうせ、あちらにも大した体力は残っていまい。この攻撃を受け止めれば、私の勝ちだ。私は魔剣を構え、守備の体制をとる。
「これで最後だ! うおおおおおおおおおっ!」
ガキィ……ン!
鋭い痛みとともに私の肩から血飛沫があがる。魔剣は、根元から三分の一ほどのところで折られていた。
「そんな……そんな莫迦な……!」
ザクッ。魔剣の先が地面に突き立つ音を背後に聞いた。
回想終わり カントル 商店街
うっかり忘れていた。
「クイズ! 何か武器をこっちに!」
「わかった! ――ちょっと借りるよっ!」
クイズは店員が逃げ出した武器屋の店先から、手近な武器を拾って私のほうに放る。
「よしっ、礼を言うぞ!」
私は武器を受け取る。フン、なるほどこれは……。
ひのきのぼう?
「って貴様ああああ! もっとマシな武器をよこさんかっ!」
「贅沢言わないでよ! そんなことより、次の攻撃が来るよ!」
仕方がない、これで戦うしかないか。私はグリムの攻撃をかわし、頭部めがけてひのきの棒を振り下ろす。しかし、棒の先にグリムはいない。かわされたか!
再び相手を狙うも、存外身軽なフットワークに翻弄されてしまう。
百年の眠りにより私自身の体がなまっているのもあるだろう。しかし、魔物の知能も上がっているのか、我々の時代の直線的な戦いとは違う、左右への動きを加えた戦い方。
何より、握りの付いていないひのきのぼうでは戦い辛すぎるぞ!
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