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「ああっ、もう、見てらんないよっ!」
そのようなことを言うのならば別の武器を渡してほしかったのだが、クイズは呪文の詠唱に入る。
「風の精霊シルフィードよ、我が意に応え大気の障壁を築け」
聞き覚えはない。ここ百年で開発された新たな呪文か。
「バリヤー!」
透明な壁が現れ、グリムの周りをコの字型に囲う。
「今だよ!」
言われなくとも分かっている。壁が消えてしまっては厄介なので、私は一撃で仕留めるために詠唱を開始する。
「我が右腕に宿りし炎の気よ、その力を我が剣に貸し与え、紅蓮の炎によって敵を灼き払え――火炎斬り!」
炎をまとったひのきのぼうが、逃げ場を失ったグリムの頭を直撃した。グリムはその場で砂となり消滅する。
「やった……」
雑魚を倒しただけなのに、何故か達成感に満たされる。
「フハハハハ! 見たか我が実力を!」
「勇者の勝ち方としては、多少卑怯な気もするけどねー」
だから私には勇者になる気がないのだが。
「ところでケイオス、ソレ、熱くない?」
何のことだ? クイズが指差しているほうに目をやるとそこには。
燃え盛るひのきのぼうがあった。
「熱ぅー!?」
「もう、ひのきのぼうで火炎斬りなんか撃つからー!」
「いつもの勢いでつい!」
私はひのきのぼう(もはやひのきの炭)を放り投げた。
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