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雨が降る冬の日の朝に、かじかんだ手に息を吹きかけ、新聞配達をしていた中学生時代、同級生のお嬢さま、桜井由美は高級車で学校に送られてきた。
私と彼女の違いはいったい何なのか?
彼女と私は、お姫さまとこまづかいくらいに
身分の差があるのだろうか?
私は桜井由美に憧れ、桜井由美のようになりたいと思いながらも、桜井由美が許せなかった。
彼女の未来が輝く宝石ならば、私の未来は河原に転がる鉛色の石ころ。
でも私は、それを認めたくはなかった。
もしも私が、その事実を認めたならば、
寺田小夜子という女の子は、何のために生まれてきたのか?
〈 私は未来を変えてみせる。
私はあの寺田小夜子をシンデレラにするの 〉
私の胸の中にある未来のシナリオ。
私は何度もそのシナリオを読み返し、寺田小夜子を幸せにすることを心から願った。
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