【その顔はあどけない】

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   昔のことだし、羨ましいわけじゃない。  だけど、なんでそれがあたしじゃなかったんだろう、って思いは消えない。  現実からひどく遠い場所で、 “世の中、そんなものだよ”って  冷めた自分がささやいてきて、  イライラグラグラした気持ちが  お腹の底に落ちていく。  落ちていくだけで、なくなったわけじゃないことは自分が一番よく判っていた。 「……言うんじゃなかった」  低く溜め息混じりに言うと、ケタケタ笑っていた菜月と飛鳥の動きがピタリと止まる。  味わうこともなくプリンをダーッとかっ込んでしまって、立ち上がりざまゴミ箱に放り込んだ。 .
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