【その顔はあどけない】

9/33
前へ
/33ページ
次へ
   だんだん声が小さくなっていく菜月のわき腹を、飛鳥の肘がうりうりとつついた。 「何。あいつ、あんな顔してやっぱり言うの、“好きだ”とかって」 「や、今のなし。聞かなかったことにして」  ……なんだろう。  やっぱり、イライラする。  菜月のノロケを聞きながら、思い出すのは高校時代の制服姿の真田。  表情ひとつ変えずにあたしを振ったあの殺し屋みたいな顔の男が、菜月にはそういうこと言うんだなーと。  あれから、何年経ってるんだろう。  飛鳥だってそう。  男の人相手に、  一体何をして何を言ったら、  そんな一途に想ってもらえるの。 .
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

186人が本棚に入れています
本棚に追加