【月とアマノジャク】

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  「あぁ、もう。本当、鬱陶しい」  声に重量なんてものがあれば、ややあって足下でドスンと音でもしただろう。  そのくらい、ぞわぞわするような低い声が出た。  窓枠にしがみつくようにして外を眺めるあたしを見て、何度か現場がかぶったことのある女の子がクスクス笑った。 「仕方ないよ。そういう季節だもん」 「そうだけどー」  なおもあたしは真っ黒な空を睨み付ける。  昼間だってのに暗い。  出勤してきた時には、眩暈がするほど晴れていた。  けど一仕事して、お昼ごはんを食べたら──なんなんだ、この大雨。 .
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