【視線の鼓動】

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   ……さっきも、そう。  火傷した手首を秀秋に握られても、全然怖くも何ともなかった。  冨永さんの時は、あんなに嫌だったのに。  むしろ、守ってくれる  手だって思って──  それで、情けないくらい  ボロボロに泣き出してしまった。 「ん、ひで、あき……」  ふ、と彼の息が鼻先にかかる。  頭を抱えられるようにされながら、眩暈がした。  秀秋のもう片方の手が顎にかかって、あたしの顔を上向かせる。  ただ塞ぐだけじゃなくて、彼の口唇は離すまいとするようにねっとりとまとわりついてきた。 .
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