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「……秀秋、あの」
「何だよ。うるさいんだけど」
ズキズキ、心臓が痛い。
「あたし、秀秋が何考えてるか全然判んなくて……その」
「別に芹香が知る必要なんてないだろ」
「やだよ」
「なんで」
「知りたい」
「だから、必要ない」
秀秋は、再び前を向いて歩き始めた。
湿気を帯びた風は、雨が降り出す前振れだろうか。
空はもう真っ黒だから、雨雲がのしかかってきていたとしてもよく見えない。
月が見えないから、たぶん厚い雲がかかっているんだろうとは思うけど。
……今日のお月様は、
まるで秀秋そのものだ。
だとしたらあたしの空はいつも、曇り空か雨模様。
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