【視線の鼓動】

7/34
前へ
/40ページ
次へ
   また混乱し始めたあたしの様子を読み取り、秀秋はまばたきをしてから穏やかな口調で訊ねてくる。  小首を傾げたその童顔が、めちゃくちゃ可愛い。 「今のも、この間のアレも。全然意味判んないんだけど」 「この間のアレって?」  この前の、坂上の言葉が頭の後ろの方でエコーする。  それから、熱い吐息と一緒に注ぎ込まれた秀秋のささやきも。 “アイツ、好きなのはお前だと思うよ。前に、そう言ってた” “芹香、好きだ” 「す、す、す……スキだとか、  口走ったじゃん!」  何度も言いかけてはやめを繰り返し、やっとの思いでそう口にした。  秀秋は一瞬目を見開いて、まじまじとあたしの目を真っすぐに見つめる。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

175人が本棚に入れています
本棚に追加