【視線の鼓動】

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   ふわ……と湿気をはらんだ風が吹いて、秀秋の長めの髪を揺らす。  そうして見え隠れする琥珀の瞳は、まったく動かない。  ……判らない。  秀秋が何を考えて、何を言っているのか、全然判らない。 「ねえ、秀秋……どういう意味?」 「なにが」 「だから、スキだって」 「そのままの意味に決まってるだろ。馬鹿にしてるの?」 「だから……」  意味が判らなくて、思わず泣きそうになる。  さっきも散々泣いたから、簡単だ。 「面倒くさいよ、こういうの。早く」  グイと手を引かれて、胸の中が水風船みたいにぱちんと弾ける。 .
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