192人が本棚に入れています
本棚に追加
──反吐が出そうだ。
地検に勤めて久しい父さんは、近い将来俺が自分の下に就くものだと信じ切っている。
幼い頃から法律書に囲まれて育ってきた。
検事という仕事に惹かれないわけではない。
やりがいもあるだろう。
が、このひとを見てきて、検事は自分の天職ではないと俺は悟った。
「その話、もうできてるんじゃないだろうね」
「いいや。お前の予定が判らないから、まだここだけの話だよ」
「そう、よかった。夏は夏でバイトで埋まると思うから、いらない」
愛想なく返すと、父さんはあからさまにがっかりした表情を向けてくる。
検察官として勤めて長いくせに、感情がそのまま顔に出る悪癖は、俺が子どもの頃から変わらない。
.
最初のコメントを投稿しよう!