【Side 秀秋:晴れない疑い】

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   ──反吐が出そうだ。  地検に勤めて久しい父さんは、近い将来俺が自分の下に就くものだと信じ切っている。  幼い頃から法律書に囲まれて育ってきた。  検事という仕事に惹かれないわけではない。  やりがいもあるだろう。  が、このひとを見てきて、検事は自分の天職ではないと俺は悟った。 「その話、もうできてるんじゃないだろうね」 「いいや。お前の予定が判らないから、まだここだけの話だよ」 「そう、よかった。夏は夏でバイトで埋まると思うから、いらない」  愛想なく返すと、父さんはあからさまにがっかりした表情を向けてくる。  検察官として勤めて長いくせに、感情がそのまま顔に出る悪癖は、俺が子どもの頃から変わらない。 .
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