【Side 秀秋:晴れない疑い】

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   ……でも、よかった。  うっかり口に出さなくて。  迂闊な自分を笑い飛ばしたくて、思わず芹香を「……は」と鼻で笑ってしまっていた。 「自分だけ独り身みたいで居心地が悪いってこと?」 「うーん、それは……ああ、でもそういうことになるのかなぁ……」  芹香は自分の額に手を当て、身体ごと首を傾ける。 「いや、うん。でも、菜月は知ってるの。あたしにこうして会う相手がいることは」 「ああ、そう」 「……けど、けどさ……」  いつになくしつこい芹香は、実はさっきから酔っ払っている。  酒の席で、いつもより早く芹香の酔いが回っていることには気付いていた。  花冷えが身体にこたえるとかなんとか言って、お開きに乗じて連れて帰ってきたわけだが。 .
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