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「びっくりした、急に首絞めるから」
「ごめんって」
「怖いよ」
言いながら、上体を起こせずにいる俺のうなじに腕を伸ばし、芹香は呆れたようにクスリと笑った。
耳元に寄せられた芹香の口唇からこぼれる溜め息が、湿り気を帯びたなまぬるい空気を引き戻す。
遠ざかりかけていたその空気は、いつも2人がこうしている間まとわりつくものだった。
恋人同士の間に流れる空気は特別なものだ、とよく言うが、全くその通りで。
甘ったるくて、どこまでも心地よく沈んでいきそうなそれを、芹香といるようになって俺は初めて味わった。
今まで恋愛だと思っていたものは違ったんだな、なんてぼんやり思うほどに。
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