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「秀秋?」
愁子が、止まった俺の手に目ざとく気付く。
その顔が少し俺を心配していて、心地よかった。
愁子の俺に対する気遣いは、幼なじみだからというのもあるが、一番大きいのは前にも言っていた通り、かなでの兄だからだと思う。
──でも、本当に、この女と恋人同士だったなら、もっと楽だっただろうな、と思うことは避けられなかった。
実際、愁子と恋とか愛を分け合うなんて、想像もつかないが。
「……悪い。メールしていいかな」
「え? どうぞどうぞ。気にしないで」
ふわりと表情をやわらかくした愁子に口だけの謝罪をもう一度繰り返し、煮え滾った感情そのままに携帯のメルフォを開く。
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