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耳を疑う言葉が飛んできたのは、どこかで囀るうぐいすの声が聴こえる季節だった。
「夏、少しうちで勤めてみないか」
何の疑いもなくそう言ったのは、父さんだ。
「先月、事務官のひとりが家業に就くことになって辞めてしまってな。空いた穴というのは大きいんだよ」
「……それで、なんで俺に?」
「未来の職場を、先に少し見ておくのも悪くないだろう?」
「学生がもぐり込めるような場所じゃないんじゃないの」
「お前も知ってるだろう。副検事は履修を経なくても就ける。短期間、その補佐をしてみるだけだ」
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