【Side 秀秋:晴れない疑い】

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  「バイトって言ったって、派遣なんだろう。受けなければいいだけの話じゃないのか」 「派遣派遣って馬鹿にしないでくれる。真面目に働いていれば、指名で仕事が入ることもあるんだよ」  不満そうに押し黙った父さんが、次に何を言おうとしているか判った。  言葉を挟ませないように、俺はそのまま続ける。 「“代わりはいくらでもいる”  なんて言うなよ。  父さんのものさしで世間は動いてないから」 「そんな言い方をすることはないだろう。だいたい、学生なのに働いていると言ったって」 「──だから、そういう偏見に塗れた言い方、聞いてるだけで疲れる」  いつもは軽く受け流すところだが、ついむきになった。  原因は、判っている。 .
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