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「ほら、前に話したルームメイトの」
判っていたが、あまり判りたくなかった。
だってそれ、ルームメイトの親友の話であると同時に、昔好きだった男の話にもなるんだろう。
聞いているだけで、何となく胃が重くなるのはそのせいだ。
別に、芹香の実らなかった恋のことなどどうでもいい。
可愛い思い出話だ。
だが、その男が未だに芹香の周囲をウロウロしていて、彼女の心を乱すのであれば──当然俺は面白くないわけで。
「アイツね、最近よく来るのよ」
「どうして」
「来るのは、彼女の……菜月の部屋に、なんだけど。共有スペースに当然みたいな顔していられると、毎回心臓に悪いって言うか」
人相が悪いからよけい、と芹香は付け足した。
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