【Side 秀秋:晴れない疑い】

7/37
前へ
/38ページ
次へ
   ……ほんと、面白くない。  芹香の親友の彼氏だからって、芹香の部屋に出入りするなんて、羨ましいにもほどがある。  こっちは欺いている手前、部屋に行きたい、なんて言えないっていうのに。  まともな彼氏なら当然言えるんだろう。  芹香のモヤモヤは、こっちまで自業自得の爆弾を受ける。  芹香はまだいいよ、俺にブツブツ言えるんだから。  だけど俺、自業自得とはいえ誰にも言えない。  はなから、自分の弱みなんて人に見せるような性分じゃないが。 「昔のときめきでも、思い出すの」  そんなわけはないと知りつつ、わざとそう言うと芹香は少し嫌そうに顔を歪めた。  それが小さな子どものチックみたいで、思わずなめらかな頬をふにふにと突きたくなる。 .
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

192人が本棚に入れています
本棚に追加