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「違うよ。未だにあたしの中で真田……あ、菜月の彼氏なんだけど。真田は高校生のまんまって言うか。再会してしばらく経つけど、なんか、慣れなくて」
「じゃあそれは、今のときめきじゃないの」
「違うったら。今のあたしにはそんな余裕……ないもん」
そう言って、芹香は口唇を尖らせてうつむいた。
──その余裕のなさは、
俺のせいだとでも?
甘い期待が過ぎった瞬間だった。
「菜月達だけじゃないの。
実は、飛鳥の方も彼氏ができちゃって」
「……え?」
もしかして、なんて期待は男の胸にはどうしても過ぎるものだと思う。
それが馬鹿馬鹿しい妄想に近しい種類の発想だってことは、その男自身が一番よく判っている。
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