【Side 秀秋:晴れない疑い】

8/37
前へ
/38ページ
次へ
  「違うよ。未だにあたしの中で真田……あ、菜月の彼氏なんだけど。真田は高校生のまんまって言うか。再会してしばらく経つけど、なんか、慣れなくて」 「じゃあそれは、今のときめきじゃないの」 「違うったら。今のあたしにはそんな余裕……ないもん」  そう言って、芹香は口唇を尖らせてうつむいた。  ──その余裕のなさは、  俺のせいだとでも?  甘い期待が過ぎった瞬間だった。 「菜月達だけじゃないの。  実は、飛鳥の方も彼氏ができちゃって」 「……え?」  もしかして、なんて期待は男の胸にはどうしても過ぎるものだと思う。  それが馬鹿馬鹿しい妄想に近しい種類の発想だってことは、その男自身が一番よく判っている。 .
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

192人が本棚に入れています
本棚に追加