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『夏のライブに向けて新曲つくれ』
部長からの命令が下った。
軽音部の部員たるもの、作曲のひとつも出来ないでどうする……と、レベルの高い正論を噛ましてくる。
週末の連休前、金曜の放課後。おれはいつものように音楽室のグランドピアノを使って、曲作りに没頭していた。
こだわりは無いけれど、ピアノは子供の頃から親しんできたものだから、曲を作るうえでは相性がいい。
しかもグランドピアノの響きは格が違う。
この豊かな生音は、おれの一番の癒しにもなる。
曲のイメージに浸って、耽溺するようにして楽譜を書き散らす。パソコンでの作曲は所詮量産向けだ。感情移入しにくくて、軽いものしか上がらない。
そんなふうに感じるのはおれだけなのかな。
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