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軽音部の部室でもある二階の視聴覚室の窓からは、グラウンドが一望できる。
傾きかけた陽射しの下で、運動部の連中が賑やかに活動していて、中でもひときわ熱が入って走り込んでいる陸上部の連中を眺めていると、結構いいタイムを出していそうな奴に視線を奪われているのに気付く。
そして、ソイツが2年目から同じクラスになった奴だと判るまで、しばらく時間がかかったのには自分でも呆れてしまった。
同じ年とは思えないほどの、バランスよく鍛え上げられた身体に、なぜか嫉妬と羨望を覚える。
草原を疾走する、美しい獣を思わせる存在は、不思議なほどおれを惹きつけた。
『トキオは自分の守備範囲以外には全然興味示さないよな』
おれは人からそう言われる。
あまり他人に関心を持たないおれでさえ目を奪われるくらいなんだ。
きっと誰からも注目される奴なんだろう。
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