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「な………何してるんですか………は、離してください………」
ユウは、必死で言葉を出した。ヤヨイは、ユウを助けたいが怖くてなかなか動くことができない。
「ぼ、僕のこと………好きなんだろ………?」
ユウは、ゾッとした。
「イヤッ! 離して!!」
咄嗟に、ユウは持っていたカバンで思いきり、その男の顔を殴った。
男は、不意をつかれ、尻餅をつき、その場に倒れこんだ。
「ヤヨイ! いこうっ!!」
ユウとヤヨイは、全速力で走る。
不気味で薄気味悪い男は、尻餅をついたまま最初、何がなんだか分からず、遠ざかる二人の背中をボーと見つめている。
そのとき、地面に生暖かいものがポトッと一滴落ちる。
ポトッ。
ポトッ。
一滴だけでなく、二滴、三滴と落ちてくる。
なんだろう?
そう思いながら、男が自分の鼻を手で拭うと、その手に血がついている。
血………?
男はようやく理解した。現実を受け入れることがてきた。ユウにおもいきりカバンで殴られ、尻餅をついたという現実を。
あの小娘………
悪いのは自分であろうに、そのようなことなど考えもしない。ユウに殴られた怒りで頭がいっぱいになる。
男は、身軽にヒョイと体勢を整える。そして、ユウとヤヨイのあとを、全速力で追いかけるのであった。
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