199人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここまできたら………だ、大丈夫かな………」
ユウは、息を切らしながらヤヨイに話しかける。ヤヨイもユウと同じように息を切らしながら、
「た………多分、だいぶ走ったし………」
と答える。
二人は、肩で息をしながら後ろを振り向く。
すると、あの不気味で薄気味悪い男が走って追いかけてくる。
「う、うそ………」
「ユウ!! 逃げようっ!!」
二人は、肩で息をしながら、走って逃げた。
助けを求めても誰も来ない。
いつもなら、人通りのある道で、帰るときには必ず誰かとはすれ違う。
でも、このような肝心なときに限って、運命のイタズラのあるかのように誰ともすれ違うことはない。
いや、正確にはすれ違ったのである。よりによって、追いかけてくる不気味で薄気味悪い男と。
誰か………誰か………助けて………
二人は、ふと横を見る。
公園があった。
いつも帰り道に通っている公園。
昼は景色が綺麗だが、夜は外灯もなく、薄気味悪い。しかし、身を隠すには絶好の場所である。
二人は、公園の階段を急いでかけ上がる。そのとき、二人は逃げるのに必死で忘れていることがあった。
いつもと同じ階段なのに、段数が違うときがあるという話を。15段の階段のはずなのに、14段しかないときがあるという話を。
いま、二人がかけ上がっている瞬間こそがそのときであった。
普段は、15段しかないはずの公園の階段が14段になっていたのである。
二人は、知らずにその先にある扉を開けてしまった。
そして、その扉の先に誘(いざな)われるのである。
こうして、結果的に突如、姿を消すことになるのである。それは、けして二人の意図したことではなかったのは言うまでもない。
最初のコメントを投稿しよう!