第1章

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「ここまできたら………だ、大丈夫かな………」 ユウは、息を切らしながらヤヨイに話しかける。ヤヨイもユウと同じように息を切らしながら、 「た………多分、だいぶ走ったし………」 と答える。 二人は、肩で息をしながら後ろを振り向く。 すると、あの不気味で薄気味悪い男が走って追いかけてくる。 「う、うそ………」 「ユウ!! 逃げようっ!!」 二人は、肩で息をしながら、走って逃げた。 助けを求めても誰も来ない。 いつもなら、人通りのある道で、帰るときには必ず誰かとはすれ違う。 でも、このような肝心なときに限って、運命のイタズラのあるかのように誰ともすれ違うことはない。 いや、正確にはすれ違ったのである。よりによって、追いかけてくる不気味で薄気味悪い男と。 誰か………誰か………助けて……… 二人は、ふと横を見る。 公園があった。 いつも帰り道に通っている公園。 昼は景色が綺麗だが、夜は外灯もなく、薄気味悪い。しかし、身を隠すには絶好の場所である。 二人は、公園の階段を急いでかけ上がる。そのとき、二人は逃げるのに必死で忘れていることがあった。 いつもと同じ階段なのに、段数が違うときがあるという話を。15段の階段のはずなのに、14段しかないときがあるという話を。 いま、二人がかけ上がっている瞬間こそがそのときであった。 普段は、15段しかないはずの公園の階段が14段になっていたのである。 二人は、知らずにその先にある扉を開けてしまった。 そして、その扉の先に誘(いざな)われるのである。 こうして、結果的に突如、姿を消すことになるのである。それは、けして二人の意図したことではなかったのは言うまでもない。
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