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ルンッ♪
ルンッ♪
薄気味悪い男は、軽く鼻唄を歌いながら、二人の後を追う。
しかし、自分では十分な距離だと思いつつも、相手の感覚からすると、それは違う場合もある。
鋭い人もいれば、鈍い人もいる。
ユウとヤヨイは、どちらかといえば鋭い。
二人は、気づかないふりをしているだけで誰かにつけられていることに気付いていたのである。
ユウとヤヨイは、小声で話す。
「ねえ、ユウ。気づいてる?」
「うん。変な人がついてきている………よね?」
「怖いから振り返れないけど、多分………そうだと思う。」
二人は、さっきまでの楽しい気分が一転した。
それに合わせるかのように辺りも薄暗くなっている。さっきよりもさらに。
時間が経っているから、当たり前と言えば当たり前だが、後ろから誰かにつけられている中での、薄暗さや静けさは嫌な意味で臨場感がある。
でも、それはただの被害妄想かもしれない。二人は、そう思ったのも事実である。そのとき、ユウがヤヨイに切り出す。
「ハンカチ落としたふりして、さりげなく後ろ確かめてみようか?」
と。
そして、ヤヨイはその問いかけに無言でうなづいたのである。
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