第1章

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ユウは、カバンからハンカチを取りだし、さりげなくそれを落とす。 しかし、予想外の出来事が起こる。 何かのイタズラだろうか。 さっきまで、風など吹いていなかったのに風が吹く。 勢いのいい風が。 それは、二人が思っていた以上にハンカチは、はるか後方まで飛んでいく。 落ち葉が風に揺られるように。 ハンカチが上空からポトッと落ちる。 ユウとヤヨイは、ハンカチが落ちた地面を見る。そこには、破れた靴のつま先も見える。 徐々に視界を下から上へあげると、みすぼらしい服を着た薄気味悪い男がニンマリと笑って立っていた。 その男は、自分の足元に落ちたハンカチを見る。そして、それを嬉しそうに拾い上げた。 ユウとヤヨイは、あまりの気味の悪さにしばらく動くことができなかったのである。
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