痛みは愛故に

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「いった……うわ、また派手にぶち撒けたな」 部屋中にぶち撒けられた僕の内臓と血。腹にぽっかりと穴が空いている。 風呂場からシャワーの音がする。血を洗い流してるのか。どうせ僕らの血は蒸発するのに。 なんとなく、空いた腹に手を突っ込んで触ってみる。ぐにゅぐにゅした肉の感触と、ぬるぬるした血の感触と、剥き出しの腹を貫く激痛と激しい不快感。 嗚呼、なんて心地いい激痛。痛ければ痛い程、尚気持ちいい。でも、戻すの大変なんだよな。 とりあえず、内臓戻そう。立ち上がろうと前屈みになったら、腸と肝臓が落ちた。 腸はまだ繋がってるみたいでだらんとぶら下がって、血に塗れた肝臓は蠱惑的にぬらぬらと輝いてる。 肝臓と腸を腹に押し込んで、立ち上がる。落ちないように手で押さえながら、部屋中に散らばった内臓を腹に収めていく。無茶苦茶だけど、一時間したら勝手に元の位置に再生してるから、問題なし。 で、せっかく集めた内臓を落とさないために針と糸で穴をちくちく塗っていく。痛いのは痛いけど、物足りない。 縫い終わって鋏で糸を切る。見ると血が蒸発し始めてる。 「あれ?兄さんもう起きたんですか?」 弟の死体が、濡れた髪を拭きながら全裸で上がってきた。僕の名前は屍。弟の名前は死体。ホントふざけた名前つけられたもんだな。そのまますぎじゃないか。 「そりゃあ、心臓を殺られてないからね」 「うふふー、実は兄さんの心臓ちょっと齧って、舐め回した後に元に戻したんですけどねー?兄さんの心臓は今、僕の唾液塗れだったりします」 「……きもっ」 胸張って言うことじゃない。 心臓取り出して洗おうかと思ってたら、死体が抱きついてきた。 「兄さん、次は僕の番ですよ?一思いに、愛情たっぷりにぶっ殺してください」 いつものように、恍惚とした表情をしつつ狂気を存分に宿した目で、僕を見つめてくる。 嗚呼でも、僕にしか見せないこの表情が大好きだ。 蒸発しつつある血を纏うナイフを手に取り、死体を抱き寄せ、愛しい弟の首にナイフを構える。 「兄さん、僕を愛してくれてますか?」 「愛してるよ」 そして死体の首にナイフが飾られる。
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