甘香、幻影を払う

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 その爆弾はいつもとなんら変わりのない、二人が運動代わりの戦闘訓練を行う、うららかな昼下がりに投下された。 「蓮、次の一本、蓮が取れなかったら、私、しばらく蓮と会わない」  投下主は、八代百合(やしろ・ゆり)。  人形のように整った美しい容貌に、華奢な体を持つ、絶世の美少女。 「え……?」  投下先である天翔院蓮(てんしょういん・れん)は、ものの見事にフリーズした。  それはそうだろう。  最愛の彼女である百合に、絶縁宣言をされたようなものなのだから。 「蓮、気、抜きすぎ。  もっと本気で来なきゃ、駄目」  対する百合は、いつも通りの無表情を若干ふくれっ面にすると、腕を組んで蓮を見上げた。 「『Battle Piece』は、確かになくなった。  でも、蓮は、稔(みのる)の護衛を続けるんでしょ?」
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