甘香、幻影を払う

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「……本気なのか?」  『Battle Piece』は、確かに消滅した。  『Battle Piece』史上最後のゲームである八代対采上……『鮮血の女王(ルージュ・クイーン)』と『漆黒の騎士(ダーク・ナイト)』による一騎打ちで事故が起こり、ホストであった八代第二邸は焼け落ち、駒(ピース)2体ともども、『Battle Piece』総支配家・八代の主、椿(つばき)も死亡した。  後継権を握った采上が『Battle Piece』の閉幕を宣言した今、新たなゲームが開催されることはない。  ……ということに、表向きはなっている。 「私は、本気」  実際には、『鮮血の女王(ルージュ・クイーン)』である百合も『漆黒の騎士(ダーク・ナイト)』である蓮もここでこうして生きている。  ゲーム盤になっていた八代第二邸の火事は、事故ではなく八代椿が故意に起こしたものだ。  閉幕は宣言されたが、裏社会の更に深いところでゲームは続いているのだろうし、采上の主である稔は、それの取り締まりに乗り出そうとしている。 「いざという時に、蓮が傷を負うのは、嫌」  蓮は、表向きには死んだことになっている。  蓮の身を守るために、稔がとった策だ。  元々、最後のゲームから生きて帰れたらそうなるということは、蓮にも知らされていた。  でも蓮本人はここでこうして生きている。  生きている以上、新しい道を探していかなければならない。 「傷つく蓮を見るのは、もう、嫌」
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