3人が本棚に入れています
本棚に追加
「……百合」
百合の無表情が、はっきりと分かるくらい歪む。
百合が思い浮かべているのは、最終ゲーム終了後の蓮の姿なのだろう。
記憶を消されて椿に操られていたとはいえ、死の間際まで徹底的に蓮を追い詰めたのは、他ならぬ百合だ。
「だから、蓮には、強くなってもらわなくちゃいけないの。
……私なんて、軽く倒せるくらいに」
百合は小さく息をつくと表情をかき消した。
それだけでスッと、周囲の空気が冷える。
「本気で来い、蓮」
恋人の顔から師の顔になった百合を見て、蓮もこれ以上言葉はいらないと悟ったのだろう。
両手に握ったサバイバルナイフを構える。
右手に順手、左手に逆手。
足は肩幅に開いた自然体。
手にしている物がサバイバルナイフと短刀という違いはあれども、まるで鏡に映したかのように同じ形で二人は構える。
最初のコメントを投稿しよう!