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それは豪雨が鳴り響き、雷鳴が轟く日だった。
終戦からやっと一年が経とうとしていた。
めまぐるしく変わる環境の中、人々は必死に前を向いていた。
それは上も下も関係なく、対応に追われ、戦中とは違った疲弊感……
そして、満足感を皆に与え共有していった。
だが、国内の至る所で火だねが残っていた。
今日もおそらくどこかで……
そんな中、一つの人影が国の新しい象徴となる白い城から出てきた。
もちろん警備の兵はいる。
しかし、この豪雨の中だ。
視界は悪く、士気が上がるわけがない。
とはいえ、兵士達に取ってみればまだまだきな臭い世の中だ。
そこで気を抜くわけにもいかないのだ。
カッパを一応羽織ってはいるが、それもあまり効果はなさそうな雰囲気だった。
そんな彼らの背後をそれは通過していく。
たしかに、近くにいる僚友とも怒鳴り合わないと声など聞こえはしない。
だが、それでも何人の衛兵が城内にいるというのだろうか?
その全てがその存在に気付くことはなかった。
悠々と城壁に侵入し、そして塀の上へと出た。
足は迷わずその縁へ……
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