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良くも悪くも、そして今いるこの環境はそのペースに合っているのかもしれない。
村の方を振り返ってみると、先ほどまでは何もなかったが、所々で煙突から煙りがあがりだしていた。
そんなときだった。
「おーい」
村のほうから、一台の馬車が現れた。
荷台は幌で覆われ荷は満載となっていた。
「おはよう、イレーナ」
「あら、デニス。おはようございます」
少し頭が薄くなりだした中年の男だった。
馬車の業者台には作ってもらったのだろう、大きめのサンドイッチが置いてあった。
「そんなところに置いておくと、取られるわよ?」
「こんな時間から盗賊なんて出やせんよ」
デニスは笑うが、イレーナは苦笑していた。
「違うわ。ほら、こんな時間でも」
彼女はそう言い、上空を指さした。
すると、二羽の猛禽類が馬車の上空を旋回するようにしていた。
「ありゃ、こりゃぁいかん。ペッピ共じゃないか」
人里で人の食べるものをかすめ取る猛禽類だった。
小型の体躯では山では生きていくのが厳しいらしく、いつの頃か人里周辺で暮らすようになったときく。
ちなみにペッピとは盗人の別称として昔は言われていたと言う。
「ほぉら、朝からあんなのに目をつけられるんだからねぇ」
「ちぃ、朝からやられてたまるかい」
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