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基本的に、彼も含めこの村の住人達は温和だった。
しかし、彼女のように若い年代の男性は比率的には少なかった。
それもこれも戦争のため……
少し年配の男性か、若手の女達が畑に出て毎日のように汗水を垂らしていた。もっとも、そんな状態を子供達がほっとくわけもないのだが……
「コレスじいちゃ~ん」
「おぉ?」
「まだ来ないの~?」
少し離れた所に男の子が麻袋を持って手を振っていた。
「すまんすまん! すぐいくよ」
「あら? 今日は教室の日ではありませんでしたっけ?」
「ははっ、うちの坊主は俺と畑に出ている方が楽しいんだとさ。まぁ、この時期だから助かるんだがね?」
困ったもんだ、と言いつつも彼は嬉しそうにしていた。
「じゃ、頼んだよ」
「はい、失礼します」
コレスはゆっくりと歩いて行く。
その速度に待ちきれなくなったのか、栗色の頭をした少年が彼の手を引っ張りに来ていた。
彼女はそんな光景を微笑みながら見送った。
「さて、私もがんばらなきゃね」
柔らかい風が彼女の頬を撫でていった。
青い青い空……
ここに来るまではそんな光景すら目に入ることなどなかった。
「いい風……」
自然のまま、そしてゆったりと時間に身を委ねることが出来た。
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