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だが、それ以外で殺してしまうという行為があまり好きではなかった。
だからこそ……
「怖い思いをしたんだから、これに懲りるんだよ?」
そっと地面にそれを下ろした。
そして周囲に人がいないかを確かめた。
これがバレてしまうと、色々と面倒になるのは必至だからだ。
幸い、みなこの忙しい時期は自分達の畑に集中している。
「ふぅ……」
今一度視線を地面へと下ろすと、まだ動けないでいるがそれは不思議そうに彼女の顔を見ているような気がした。
「ふふっ、じゃあね」
イレーナはそう言うと再び作業へともどっていった。
作業を順調に進めていく。
集中していると時間を忘れるのは彼女の悪い癖だった。
こまめに休憩を入れろと、村のみんなからは言われているのに、それがあまり出来ないのが彼女だった。
太陽が結構高い位置まで昇っていた。
もうじき、エリクスが帰ってくる時間でもある。
昼の支度もかんがえなくてはならない。
そう思っていた矢先だった。
ふと畑の一角を見てみると違和感を憶えた。
用心して近づいてみると、その予想は当たっていた。
「これは……?」
畑に一筋の道のようなものが出来ているのだ。
昨日まではこんな道はなかった。
まるで獣道のように踏みつけられ、強制的に道が出来ていた。
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