二羽 揺れる想いたち

2/19

25人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
 もう、何百回、何千回と踏み込みをしたような気がした。  それでも互いに倒れない。  周囲は最初は熱狂の渦に燃えていたが、今では静かに……そして見入るようにしている。  一晩はすでに経っている。  日の動きがなければ、もはや時間の感覚などなくなっているだろう。  それでも……それだけの時間を費やしていても……  有効な攻撃は今の所ない。  大質量の青い大剣……そして、少し細身……そして反るようなエッジの紅い剣。  それらが激しく打ち鳴らされていく。  そして、彼が笑った。  構えを解かず、彼女が怪訝そうに彼を睨んだ。  ”どうかしたのかい?”  ”いやなに、全ての決着をと思って来たってのに……”  死力を尽くしているはずの死合……いや、決闘。  ”なかなか、思い通りにはいかないものだな”  ”それが生きると言うことだろう?”  彼女も笑った。  それはそれは楽しそうに笑った。  ”そうだな。俺達は今生きている!”  そう男は叫び、剣を振り上げた。  ”あぁ、生きている! だからこそ、戦うんだ!”  女もそれに応じた。  激しい金属音だけが二人を包み込む。  それはやがてハーモニーのように……メロディを奏でていった……                ・
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加