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もう、何百回、何千回と踏み込みをしたような気がした。
それでも互いに倒れない。
周囲は最初は熱狂の渦に燃えていたが、今では静かに……そして見入るようにしている。
一晩はすでに経っている。
日の動きがなければ、もはや時間の感覚などなくなっているだろう。
それでも……それだけの時間を費やしていても……
有効な攻撃は今の所ない。
大質量の青い大剣……そして、少し細身……そして反るようなエッジの紅い剣。
それらが激しく打ち鳴らされていく。
そして、彼が笑った。
構えを解かず、彼女が怪訝そうに彼を睨んだ。
”どうかしたのかい?”
”いやなに、全ての決着をと思って来たってのに……”
死力を尽くしているはずの死合……いや、決闘。
”なかなか、思い通りにはいかないものだな”
”それが生きると言うことだろう?”
彼女も笑った。
それはそれは楽しそうに笑った。
”そうだな。俺達は今生きている!”
そう男は叫び、剣を振り上げた。
”あぁ、生きている! だからこそ、戦うんだ!”
女もそれに応じた。
激しい金属音だけが二人を包み込む。
それはやがてハーモニーのように……メロディを奏でていった……
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